昨年末に開催されたSUBZERO(NY)とSON OF SKAM(NY)とのジャパンツアーから早1年、Aggressive Dogs a.k.a UZI-ONEは、今年も実に多くの海外バンドとのツアーを実現させてきた。3月にはフランスのパンクバンド NICHIEL'Sと「SEIZE THE DAY -初志貫徹」を全国9カ所で行い、7月にはMAメタルコア THY WILL BE DONEと「MESMERIZING -力戦不撓」を全国10カ所に渡って開催した。9月に来日を果たしたフィンランドのメロディック・デス・メタル MYGRAINとの全国10カ所に及ぶ「stacked -士気鼓舞」はいまだ記憶に新しい。音楽業界が凋落の一途を辿るなか、この動き方はまさに驚異的であるといえよう。多くのバンドがまともにステージに上がることさえままならぬ時代である。ましてや、海外バンドを日本へ招聘するとなると、それだけ多大なリスクが生じる。多くは「実」を取らざるをえないため、若手で良質な海外のバンドを日本で見ることは難しい。その意味でも、彼らによる一連の取り組みは、それだけで既に価値あるものといえる。
彼らの主催するイベントには各回異なった表題が掲げられていることはご存知だろうか。今回でいえば「大勇猛心(たいゆうもうしん)」。この言葉は、禅(ぜん)の教えに基づく。一般的に、禅修行には3つの心掛けが求められる。一つに、信なる心を持つこと=『大信根』。二つに、疑いを持つこと=『大疑団』。そして三つに、『大勇猛心』=気概を持って、決して退転しない心だ。人生が決して平坦なものではないように、音楽を続けることもまた同様である。大望は大きな犠牲の上に成り立つ。それを当事者ではない、わたしたちはあまり知らない。「荊棘林中一条路(けいきょくりんちゅういちじょうのみち)」。修行の厳しさは荊(いばら)の道を歩むようなものだが、そういう苦しい中でも求めることで、刺々しい道のなかにも一条の道が開ける、という禅語である。Aggressive Dogs a.k.a UZI-ONEは年が明けた2013年に、結成30周年を迎える。彼らによる言葉だからこそ、そこに生が宿る。たとえ苦難に直面したとしても、続けることの意義――。「刻苦すれば光明必ず盛大なり」。先を見据えるその目はいまだ衰えず。